目が覚めた時点で暗いと思ったが、寝室のブラインドを開けると、やはり雨だった。
昨夜、もうすぐ終わってしまう展示会を見に美術館に行こうと決めたものの、午後3時にはひどいどしゃぶりになっていたので、無理に出掛けなくて本当に良かったと思う。
でも、こういう日も嫌いじゃない。
晴れた日も大好きだが、雨の日は「外に出なかった」という謎の罪悪感を感じなくて済むし、家の中にいる幸せがより引き立つ。
こんな寒い雨の日は、ゆっくりのんびりと温かい飲み物を飲みながら、薄暗く湿った窓を眺めるのが良い。
ただ残念なのは、雨から身を守るこの家の中が、理想的な素敵空間とは言えないこと。
改めて、私の意思で選んだ家具がほとんどない、物で溢れて乱雑な感じになっている部屋にも目を向けてみる。
ここにはおいしい料理を食べるダイニングテーブルも、お気に入りの服を収納するタンスも、集中出来る静かな環境の机も、今欲しいと思っているものが何もない。
それを言うと、うちのバルコニーの背の高いビルばかりで、よく見えるのは隣のビルのバルコニーという景色も、全然素敵ではない。
だけど、どうやら私はここが好きらしいのだ。
オーストラリアのいちばん栄えている場所にあるうちのユニットは、がっちりと守られた、まるで空中秘密基地のよう。
閉鎖的なようで、とても開放的な空間だ。
今後、私はここを理想の場所に改造出来る日が来るのだろうか。
コロナ禍からずっと定位置にあるソファーは居心地が良いが、そのせいで一旦座ると動けなくなる。
環境の整備はとても大事なもので、それだけで気分も全く変わるのは、よく知ってる。
せめておしゃれなバルコニーを作れないものか…、そう思いながら雨の音が響く窓を見る。
とりあえず、雨の日はおとなしく家に籠る日。それはそれで素敵なことだ。